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小説表現集

2019.03.23 15:04

残り火 小杉健治


ふと、影が差した。テーブルの脇に男がたった。

あなたへ 森沢明夫


鼻の奥にツンとこみ上げる熱が涙に変わらないよう心を砕いていた。

用水路はチョロチョロと心地よい流水の音を奏でている。昼間なら銀鱗(ぎんりん)をきらきら光らせた小魚の姿が見られる、澄んだ流れだ。

すうっと東へ流れる雲の切れ間に、銀色の三日月が鋭利な刃物のように光っていた。

峠の駐車場には幽寂(ゆうじゃく)とした闇が沈殿していた。
駐車場の周囲は、ぐるりと濃密な樹々に覆われている。
頭上では、影絵を思わせる幾千もの枝葉が生暖かい夜風と戯(たわむ)れて、ざわざわと不穏な音を立てていた。
明滅を繰り返す自販機が、ひとつ。
古びた水銀灯が、ふたつ。
それらの頼りない光源には無数の蛾たちが吸い寄せされ、狂ったようにガラスにぶつかりながら乱れ飛んでいた。
その明かりすらもほとんど届かない駐車場の最奥部には、には、紺色のハイエースワゴンが停まっていた。ワゴンはまるで、何年も前からそこに捨て置かれているように、ひっそりと闇に同化していた。数十台は停められそうな駐車場だが、午前零時をまわったいま、泊まっているのはこのワゴン車だけだった。

一週間ぶりに吸い込んだ地元の夜気には、馥郁(ふくいく)とした香ばしい土の匂いがたっぷり含まれていて、妙にほっとする。














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